
【返済が厳しいときのリスケジュール交渉法と成功事例】
1. はじめに
事業や個人の資金繰りが厳しくなり、ローンの返済が難しくなることは珍しくありません。しかし、そのまま放置すれば、延滞が続いて信用を失い、最悪の場合は資産の差し押さえや破産に至ることもあります。
こうした状況を回避するために有効な手段の一つがリスケジュール(返済条件の変更)です。リスケジュールを成功させるには、金融機関との適切な交渉が欠かせません。しかし、
- 「リスケジュールを申し込むと信用に影響が出るのでは?」
- 「銀行はどんな条件で応じてくれるのか?」
- 「具体的に何を準備すればよいのか?」
といった疑問や不安を抱く方も多いでしょう。
本記事では、リスケジュールの基本知識、交渉の進め方、成功するためのポイントを詳しく解説し、実際の成功事例も紹介します。これを読めば、返済が厳しい状況でも適切に対応し、資金繰りを改善する方法が見えてくるはずです。
2. リスケジュールとは?基本知識と適用条件
リスケジュールの定義と目的
リスケジュール(Rescheduling)とは、金融機関との契約を見直し、返済期間の延長や返済額の引き下げを行うことで、一時的な資金繰りの負担を軽減する措置です。
一般的に、リスケジュールには以下のような方法があります。
リスケジュールの種類 | 内容 |
元金据え置き | 一定期間、元金の返済をストップし、利息のみを支払う |
返済期間の延長 | 毎月の返済額を減らし、返済期間を延ばす |
返済額の減額 | 一時的に返済額を下げ、資金繰りの改善を図る |
金利引き下げ | 金利の引き下げ交渉を行い、支払総額を軽減する |
このような調整を行うことで、資金繰りの負担を和らげ、事業の再生や個人の生活再建の時間を確保することが目的です。
リスケジュールを適用できるケース
リスケジュールは、すべての債務者が無条件で適用できるものではなく、適用されやすいケースとされにくいケースがあります。
✅ 適用されやすいケース
- 売上の減少による資金繰り悪化(企業)
→ 取引先の倒産、業績不振、外部環境の変化による売上低下 - 収入の減少(個人)
→ 会社の倒産、リストラ、給与の減額、病気による収入減少 - 一時的な支出増加
→ 事業の立て直しに伴う設備投資、家族の介護や医療費の増加 - 災害や予期せぬトラブル
→ 地震や台風などの災害による売上減少、突発的な事故
❌ 適用されにくいケース
- 著しい信用低下
→ 長期間の延滞があり、金融機関との信頼関係が完全に崩れている - そもそも返済能力がないと判断される場合
→ 現在の収入や事業の将来性がなく、回復の見込みがない - 過去に何度もリスケジュールを申し込み、計画を守れなかった場合
→ 一度認められたリスケジュールを守れなかった場合、再度の申請は困難
リスケジュールが認められる条件
金融機関がリスケジュールを認めるかどうかは、以下のポイントが重要になります。
✅ 継続的な収入(売上)があること
完全に返済の見込みがない場合、リスケジュールの承認は難しくなります。今後の収益見込みがあることが重要です。
✅ 具体的な返済計画を提示できること
「いつまでにどの程度の回復が見込めるのか」「どのように返済を再開するのか」などを明確に説明する必要があります。
✅ 事業改善や生活再建の意思があること
金融機関は「再建の可能性があるかどうか」を重視します。経営改善計画を示すことで、前向きな姿勢を伝えることが大切です。
✅ 誠実な対応を取ること
延滞を放置するよりも、早めに相談し、金融機関との信頼関係を築くことが重要です。対応が遅れるほど、交渉が難しくなります。
リスケジュールのメリット・デメリット
リスケジュールには利点もありますが、注意点もあります。
✅ メリット
- 毎月の返済負担が軽減され、資金繰りに余裕が生まれる
- 破産や差し押さえを回避し、事業や生活の再建が可能になる
- 信用情報への影響を最小限に抑えながら、解決策を講じることができる
❌ デメリット
- 信用情報に影響が出る可能性がある(金融機関によっては、リスケジュールを「条件変更」として記録する場合がある)
- 返済期間が長くなることで、最終的な総支払額が増えることがある
- 金融機関の審査が厳しくなる(新規融資が受けにくくなる可能性がある)
3. リスケジュール交渉の具体的な進め方
リスケジュールの申請を成功させるには、適切な準備と交渉が必要です。金融機関は「本当にこの企業・個人に返済能力があるのか?」を厳しく審査するため、しっかりとした説明と具体的な計画を示すことが重要です。
この章では、リスケジュール交渉をスムーズに進めるためのステップを解説します。
① 交渉前に準備すべき資料
交渉を成功させるためには、金融機関が納得できる資料を準備することが不可欠です。以下のような書類を揃えておきましょう。
(1)直近の財務諸表・収支状況
- 企業の場合:決算書(直近期分)、試算表、資金繰り表
- 個人の場合:給与明細、確定申告書、家計収支表
(2)現在の債務一覧
- 借入先、残高、金利、毎月の返済額を一覧化する
- 企業であれば買掛金・未払い金も整理する
(3)今後の返済計画(資金繰り計画)
- どのようにして収入を増やし、返済を続けるかを示す
- 「いつから返済を再開できるのか?」を明確にする
(4)事業・生活改善計画
- 企業の場合:事業改善の具体策(コスト削減、新規顧客開拓 など)
- 個人の場合:支出削減計画、副業や転職などの収入増加策
② 銀行との交渉のポイント
金融機関との交渉では、次のポイントを意識して進めましょう。
(1)早めに相談する
延滞が発生してからではなく、「返済が厳しくなりそう」な段階で相談することが重要です。金融機関は、計画的に対策を講じる顧客には比較的柔軟に対応してくれます。
(2)誠実な姿勢を示す
リスケジュールを申請すると、金融機関は「本当に返済の意思があるのか?」を見極めようとします。そのため、<br> ✅ 正直に現在の状況を説明する
✅ 返済の意思があることを明確に伝える
✅ 経営改善や支出削減の努力を見せる
といった姿勢が求められます。
(3)「リスケ後の返済計画」を明確にする
リスケジュールを申請する際、「〇ヶ月後には状況が改善し、返済を再開できる」という具体的なプランが必要です。例えば、
✅ 「半年間は元金据え置き、その間に新規契約を獲得し、ヶ月目から返済再開」
✅ 「ヶ月間は返済額を半分にし、ヶ月目から通常の返済額に戻す」
といった具体的な計画を提示することで、承認される可能性が高まります。
(4)第三者のサポートを活用する
交渉が難航する場合、金融機関との交渉に慣れた専門家(税理士、中小企業診断士、弁護士など)のアドバイスを受けるのも有効です。
✅ 企業の場合:「中小企業再生支援協議会」などの公的機関を活用する
✅ 個人の場合:「法テラス」「金融庁の相談窓口」を利用する
これらの機関を通じて交渉を進めると、金融機関の対応がスムーズになることがあります。
③ 交渉が難航した場合の対応策
銀行がリスケジュールを渋る場合、以下のような対策を検討しましょう。
(1)別の金融機関に相談する
メインバンクがリスケジュールを認めない場合でも、他の金融機関が柔軟に対応してくれることもあります。<br> 例:
- 地方銀行信用金庫・信用組合に相談
- 住宅ローン金融機関の住宅ローンセンターに直接交渉
(2)保証協会付き融資の活用
中小企業の場合、信用保証協会を通じたリスケジュールの相談も選択肢の一つです。
(3)「サービサー(債権回収会社)」に移る前に手を打つ
銀行が返済困難な債務をサービサー(債権回収会社)に売却すると、より厳しい取り立てが行われる可能性があります。その前に交渉を進めることが重要です。
4. リスケジュールの成功事例と教訓
リスケジュール交渉が成功した事例を見ていくことで、どのようなポイントが重要なのかが明確になります。ここでは、中小企業のケースと個人のケースに分けて紹介し、成功の共通点と教訓を解説します。
① 成功事例(中小企業編)
ケース:飲食業の資金繰り改善に成功
状況
- コロナ禍の影響で売上が減少
- 毎月の銀行返済が万円資金繰りが厳しくなり、リスケジュールを検討
対応
- 金融機関に早めに相談
- 延滞する前に、銀行に状況を報告
- 「事業改善計画書」を作成し、将来的な回復の見込みを説明
- 6ヶ月間の元金据え置きを交渉
- 「ヶ月後には売上が回復する見込みがある」と説明
- その間にコスト削減・新メニュー導入を進めると提案
- 新規の融資枠を獲得
- 既存の融資をリスケしつつ、新たに運転資金として万円を借り入れ
結果
- 6ヶ月後、売上が回復し、元の返済額に戻せた
- 銀行との信頼関係を維持し、追加融資も受けやすくなった
成功のポイント
✅ 延滞前に交渉したことで、銀行が前向きに対応してくれた
✅ 具体的な改善策を示し、説得力のある計画を提出した
✅ 新規融資を獲得し、資金繰りを安定させることができた
ケース:建設業の長期返済計画の見直し
状況
- 受注減によりキャッシュフローが悪化
- メインバンクの借入残高万円、月の返済額万円
- このままでは半年以内に資金ショートする状況
対応
- リスケジュールを銀行と協議
- 元金の返済を年間据え置き、利息のみの支払いに変更
- その間に新規案件の獲得を進める
- 金融機関に対して「リスケ後の事業計画」を明示
- 具体的な売上回復の見込みを示し、回復時期を明確に提示
- 経営改善のために固定費削減、人員配置の見直しを実施
結果
- 1年後に売上が回復し、リスケ後の条件で返済を継続
- 金融機関の信頼を維持し、新たな融資枠を確保
成功のポイント
✅ 銀行に対してリスケ後の事業計画を明確に示した
✅ リスケの間に経営改善を進め、売上回復の準備を行った
✅ 金融機関と継続的にコミュニケーションを取った
② 成功事例(個人編)
ケース:住宅ローンのリスケジュール成功事例
状況
- 会社の業績悪化により給料が減少
- 住宅ローンの月々の返済が万円負担が大きくなる
対応
- 銀行に返済条件の変更を相談
- 一時的に返済額を万円に引き下げる交渉
- 「年後には収入が元に戻る見込み」と説明
- 家計の見直しと支出削減を実施
- 不要な支出を削減し、毎月の貯蓄を増やす
- 生活費の管理を徹底
- 副業を開始し、収入増加を図る
- 週末に副業を行い、月万円の追加収入を確保
結果
- 返済額を一時的に減額し、生活を維持できた
- 3年後に収入が回復し、元の返済額に戻すことができた
成功のポイント
✅ 早めに銀行に相談し、誠実な対応を取った
✅ リスケ期間中に収入増加と家計改善に取り組んだ
✅ 具体的な返済計画を銀行に提示した
③ 成功したケースの共通点と教訓
上記の成功事例から、リスケジュール交渉を成功させるための共通点をまとめると、次のようになります。
✅成功するためのポイント
- 延滞する前に相談する
- 銀行は「早めに相談してくれる顧客」に対して柔軟に対応する
- 説得力のある計画を用意する
- 事業改善計画・生活再建プランを明確に示す
- 金融機関と誠実な関係を築く
- 嘘をつかず、正直な情報を伝え、信頼関係を維持する
- リスケ期間中に経営・家計改善を進める
- 売上・収入増加策、コスト削減を徹底し、回復の準備をする
- 専門家のアドバイスを活用する
- 税理士、弁護士、金融機関の相談窓口を利用し、より有利な条件を引き出す
4. まとめ:リスケジュールは再建への第一歩
リスケジュールは、「借金を免除してもらう」手段ではなく、資金繰りの負担を軽減し、事業や生活を立て直すための手段です。
大切なのは、「リスケ後にどうするか?」という視点を持つこと。
金融機関は、計画的に返済を継続できると判断すれば、リスケジュールを前向きに検討してくれます。
「返済が厳しい」と感じたら、早めに金融機関へ相談し、誠実に交渉を進めることが成功のカギです。
🔹こんな方はぜひ専門家に相談を!
- 銀行との交渉が難航している
- 返済計画をどのように立てるべきかわからない
- リスケジュール後の経営改善・家計管理に不安がある
リスケジュールを通じて、安定した資金繰りを取り戻し、より良い未来に向けて再スタートを切りましょう!