NO204【製造業の資金繰りが苦しい時に見直すべき5つのポイント】

2025/04/26 10:00:00 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO3
資金繰り改善 NO204製造業の資金繰りが厳しい時に見直すべきつのポイント

  

はじめに:製造業における資金繰りの重要性と現状の課題


製造業における経営資源の大部分は、原材料費・労務費・設備投資といった支出に先行して使われます。これに対し、製品の売上代金は納品後に売掛金として発生し、数週間から数ヶ月後に回収されるケースが一般的です。つまり、資金の出入りに時間差があることで、手元資金が常に不安定な状態に置かれやすいのが特徴です。

 

特に最近は、以下のような環境変化が資金繰りを一層厳しくしています:

  • 原材料価格の高騰(鉄鋼・樹脂・電子部品など)
  • エネルギーコストや物流費の上昇
  • サプライチェーンの遅延による納期ズレ
  • 取引先の支払いサイト長期化(例:90日サイトなど)
  • 金融機関による融資審査の厳格化

これらの要因が重なると、資金ショートのリスクが高まり、事業継続に支障をきたす可能性もあります。

 

したがって、製造業においては「資金繰りの見える化と早期対策」が極めて重要です。本記事では、資金繰りを改善するために、すぐに取り組める5つの重要な見直しポイントを詳しく解説します。

 

ポイント①:売掛金の回収条件の見直し

製造業における「資金繰り改善方法」の中でも、最も即効性が高いのが売掛金の早期回収です。資金の出入りの中で、売掛金は企業のキャッシュフローに大きな影響を与えます。以下の観点から見直しを行うことで、キャッシュインを加速させることができます。

 

1. 支払いサイトの見直し交渉

多くの企業では「月末締め翌々月末払い(60日サイト)」や「90日サイト」が通例となっています。しかし、この条件が経営を圧迫している場合、一部の主要取引先に対しては条件の再交渉を検討すべきです。

  • 納品ボリュームが安定している企業ほど交渉の余地があり
  • 支払いサイトを短縮する代わりに、値引きなどのインセンティブを用意する交渉も有効

 

2. ファクタリングの活用

ファクタリングとは、売掛債権を第三者(ファクタリング会社)に売却し、代金を早期に受け取る仕組みです。銀行融資と異なり、売掛金の存在が信用の裏付けになるため、比較的利用しやすい資金調達方法です。

  • 2社間ファクタリング:取引先に知られずに資金化可能
  • 3社間ファクタリング:取引先の承諾を得た上で実施する形式(手数料が安い傾向)
  • 信用力の高い売掛先を活用すると、手数料も低く抑えられる

 

3. 与信管理の強化

回収リスクを未然に防ぐためには、事前の信用調査とモニタリング体制の強化が重要です。

  • 帝国データバンクや東京商工リサーチなどを活用した企業調査
  • 与信限度額の設定と社内ルールの明文化
  • 回収遅延が発生した際の対応マニュアル整備

 

4. 売掛金管理のデジタル化

Excelなどの手作業ではなく、クラウド型の売掛金管理システムを導入することで、滞留債権の早期発見や催促業務の自動化が可能となります。

 

売掛金の管理と回収条件の見直しは、単に資金繰りを改善するだけでなく、「健全な経営体質の構築」にも直結します。製造業の現場ではつい後回しにされがちなこの領域ですが、まさに今こそ見直すべき重要ポイントです。

 


 

ポイント②:在庫管理の適正化と効率化

製造業における資金繰り悪化の要因として見落とされがちなのが、在庫管理の非効率です。在庫は「資産」として扱われますが、実際には現金化されない限り、資金を拘束している存在です。特に過剰在庫や滞留在庫は、キャッシュフローを圧迫する大きな要因となります。

以下では、「在庫管理の効率化」を通じた資金繰り改善の具体的な方法をご紹介します。

 

1. 過剰在庫・滞留在庫の把握と削減

まず取り組むべきは、自社の在庫状況の可視化です。現在どのような在庫がどの程度、どの期間滞留しているのかを把握することで、不要な在庫を減らす判断が可能になります。

  • ABC分析を用いた在庫の重要度分類(A:主力品、B:準主力、C:低回転)
  • 在庫回転率のモニタリングによる不良在庫の早期発見
  • 長期滞留在庫はディスカウント販売や廃棄を検討し、倉庫コストを削減

在庫が多いほど安心という感覚は、現代の経営には通用しません。むしろ、「必要なものを、必要な分だけ、必要な時に生産・調達する」姿勢が資金効率を高める鍵となります。

 

2. 生産計画と連動した在庫最適化

在庫過多の原因は、しばしば需要予測の甘さや生産計画の曖昧さに起因します。受注予測や過去データを活用した需要予測精度の向上、そしてそれに基づく生産量の調整が重要です。

  • 月次や週次単位で生産計画と在庫水準を見直すサイクルを確立
  • 販売部門と生産部門の連携を強化し、情報の分断を防止
  • サプライチェーン全体の可視化により「いつ・何を・どれだけ持つか」の判断精度を上げる

生産計画と在庫管理がかみ合わない状態では、ムダな資材購入が発生し、資金繰りが悪化するリスクも高まります。

 

3. 在庫管理システムの導入・刷新

Excelによる在庫管理には限界があります。特に複数拠点を持つ製造業では、リアルタイム在庫情報の共有正確な在庫数の把握が欠かせません。

  • クラウド型の在庫管理ソリューション(例:ZAICO、ロジクラ、freee在庫など)の導入
  • 生産管理システム(ERP)と連動させた統合管理
  • バーコードやRFIDによる入出庫の自動化で、ヒューマンエラーを削減

このようなツールを活用することで、在庫の最適化と属人化の排除が実現し、結果として資金効率が向上します。

 

在庫は「見えにくいコスト」であると同時に、「改善インパクトの大きい資金繰り改善ポイント」です。在庫管理の効率化=現金化スピードの向上と捉え、テクノロジーと運用ルールの両面からアプローチしていきましょう。

 


 

ポイント③〜⑤:支出削減・資金調達・助成金活用の戦略的見直し

資金繰りの改善には、売上の増加や回収の早期化といった「キャッシュインの強化」だけでなく、「キャッシュアウトの最適化(支出削減)」「資金調達手段の多様化」も重要です。さらに、活用できる助成制度を最大限に使うことで、資金繰りの余裕を生み出すことが可能になります。

 

ポイント③:固定費・変動費の見直しによる支出削減

日常的に発生するコストの中には、見直すことで資金繰りを改善できる余地が多くあります。特に、固定費の削減は長期的なキャッシュアウトの圧縮につながるため、まず着手すべきポイントです。

  • 事務所・工場の光熱費・通信費の見直し
    電力契約の変更やLED照明への切り替えで数%〜十数%の削減が可能。
  • 設備保守や外注費の再評価
    内製化可能な業務や、相見積もりによる外注費の最適化。
  • 人件費の適正化
    繁忙期と閑散期に応じたシフト制導入、業務の自動化による工数削減など。

また、変動費(材料費や輸送費など)についても、複数業者との交渉や仕入れロットの見直しを通じて、年間で数百万円単位のコスト削減に成功する例もあります。

 

ポイント④:資金調達手段の拡充と戦略的活用

厳しい資金繰りの場面では、金融機関からの融資だけに依存せず、複数の調達手段を組み合わせて柔軟に対応する必要があります。

  • 信用保証付き融資や制度融資の活用
    日本政策金融公庫や各自治体の制度融資は、金利が低く、返済猶予期間も設けられており中小製造業に適しています。
  • ビジネスローン・手形割引・ABL(動産担保融資)などの検討
    売掛金や在庫、機械設備などを担保に資金を調達することで、保有資産を現金化。
  • 資金調達のタイミング管理
    「資金繰りが苦しくなってから」ではなく、「余裕があるうちに調達枠を確保しておく」ことで、急な支払いにも対応可能に。

調達手段の選定にあたっては、金利・手数料・返済期間・保証人の有無などの条件を比較し、キャッシュフロー計画に合った方法を選ぶことが重要です。

 

ポイント⑤:助成金・補助金・税制優遇制度の活用

資金繰りを助ける「隠れた資金源」として見逃せないのが、国や地方自治体、商工会議所などが提供する助成制度です。近年は中小企業支援が強化されており、製造業向けの補助金制度も豊富に存在します。

  • ものづくり補助金(中小企業等事業再構築促進事業)
    設備導入や新製品開発に対して最大1,250万円の補助が可能。
  • IT導入補助金
    生産性向上のためのツール導入費用を支援(最大350万円補助)。
  • 事業承継・引継ぎ補助金、再構築補助金、賃上げ促進税制など
    活用できる制度は多数あり、内容や申請要件は年ごとに更新されるため、最新情報のチェックが不可欠。

また、補助金・助成金の採択には申請書の完成度が大きく影響します。自社だけでの対応が難しい場合は、専門家(中小企業診断士・税理士・補助金コンサルタント)に相談することをおすすめします。




おわりに:今こそ、自社のキャッシュフローを見直す好機

製造業が厳しい経営環境に立たされる中で、資金繰りの安定は「守り」ではなく「攻め」の経営に転じる第一歩です。今回ご紹介した5つの見直しポイントを通じて、自社のキャッシュフローの流れを可視化し、改善に向けたアクションを着実に進めていくことが重要です。

 

📌 「資金繰り改善に向けて、自社の現状を客観的に分析したい」
📌
「補助金の活用や資金調達方法について専門家に相談したい」

とお考えの方は、ぜひ財務クリニック株式会社までお気軽にご相談ください。

資金繰りの診断から実行支援まで、経営のパートナーとしてサポートいたします。