NO242【銀行融資の審査で見られる財務指標とは】

2025/06/03 22:31:31 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO3
資金繰り改善 NO242

銀行融資の審査で見られる財務指標とは

  

1. はじめに:なぜ銀行は財務指標を重視するのか?

 

企業が銀行から融資を受ける際、銀行は主につの観点から審査を行います。

  • 返済能力(キャッシュフロー・利益体質)
  • 信用力(財務安定性・過去の取引履歴)

 

これらを客観的に数値で評価するために用いられるのが「財務指標」です。特に中小企業に対しては、人的信用や将来性などの定性評価も考慮されますが、最終判断に影響を与えるのは「数値に裏打ちされた信頼性」です。

 

なぜ財務指標が重視されるのか?

  • 銀行は「お金を貸して回収する」ことで利益を得る金融機関であり、貸倒リスクの回避が最大の関心事です。

 

  • 財務指標を使えば、返済に必要なキャッシュがどの程度見込めるか、短期的な資金繰りに問題はないか、長期的に見て債務超過に陥らないかなどを「定量的に」判断できます。

 

  • 担保や保証がある場合でも、財務指標の良否は金利・借入枠・返済期間に直結します。

 

したがって、自社の財務内容を見える化し、銀行目線で「この会社は貸しても大丈夫」と判断される体制を整えることが、資金調達を円滑に進める鍵となるのです。

 

 

2. 審査で重視される代表的な財務指標5選とその意味

 

自己資本比率

定義:企業の総資産に対して、自己資本(返済不要な資本)がどれほどあるかを示す指標。

計算式:自己資本総資産 × 100

目安

  • 製造業:30%以上
  • サービス業:20%以上
  • ベンチャー企業:10%以上で最低限評価

 

銀行の視点:自己資本が多い=借入依存が少ない=倒産リスクが低い、と判断されます。

資本金が大きくても、累積赤字があれば自己資本比率は下がります。「内部留保があるか」が本質的な評価ポイントです。

 

改善方法

  • 利益を出し続けて内部留保を積み上げる
  • 不採算資産の売却で資産構成を見直す
  • 増資による資本強化(第三者割当増資など)

 

 

流動比率

定義:短期的な負債に対し、短期資産でどれだけカバーできるかを示す指標。

計算式:流動資産流動負債 × 100

目安

  • 一般的に120%以上
  • 建設業・卸売業では130%以上が望ましいケースも

 

銀行の視点:現金・売掛金・在庫などの短期資産が、支払い義務に見合っているかを評価します。100%を下回ると、資金ショートのリスクがあると判断されます。

 

改善方法

  • 過剰在庫の圧縮、売掛債権の回収促進
  • 借入金の長期化(短期負債の比率を下げる)
  • 支払サイトの見直し(仕入先との交渉)

 

 

営業利益率

定義:本業(営業活動)でどれだけ利益を出せているかを示す指標。

計算式:営業利益売上高 × 100

目安

  • 小売業:3〜5%
  • 製造業:5〜10%
  • ソフトウェア・IT:10%以上が好評価

 

銀行の視点:売上総利益(粗利)よりも、販売管理費を含めた「営業利益」で見ることで、経営効率の高さや収益の安定性を評価します。

 

改善方法

  • 固定費の見直し(人件費、家賃など)
  • 粗利の高い商品・サービスへの集中
  • 価格設定の見直しと収益性改善

 

 

債務償還年数

定義:今の利益水準で、借入金を何年で返済できるかを示す、返済能力の総合指標。

計算式:(有利子負債現預金)(税引後利益 + 減価償却費)

目安

  • 5年以下:優良
  • 6〜10年:許容範囲
  • 10年超:融資審査でマイナス評価の可能性

 

銀行の視点:単年の利益ではなく、キャッシュフローに基づいて見ているため、減価償却費の扱いも含まれます。本業の稼ぐ力で借金を返せるかが重視されます。

 

改善方法

  • 借入金の削減(繰上返済、借換)
  • 収益性の向上で利益の増加
  • 資産効率の見直し(不稼働資産の処分)

 

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ

定義:利息の支払いに対して、どれだけの利益があるかを示す指標。

計算式:営業利益支払利息

目安

  • 3倍以上:安全圏
  • 1.5〜2.9倍:ややリスクあり
  • 1倍未満:融資困難なレベル

 

銀行の視点:仮に元本の返済が猶予されたとしても、「利息の支払いができない=即座に信用毀損」となります。金利上昇局面では特に重視される指標です。

 

改善方法

  • 利益の増加
  • 高金利の借入の見直し(借換、借入整理)
  • 金利交渉や補助金活用による負担軽減

 

 

これら5つの指標は、銀行融資の審査における基礎かつ重要な評価軸です。各指標を単体で見るのではなく、「全体のバランスと改善の動き」が審査では重視されます。

 

 

3. 財務指標を改善すると融資はどう変わるのか?

 

企業が財務指標を改善することで、銀行融資における評価は大きく変わります。具体的には、以下の3点にポジティブな影響を与える可能性があります。

 

 

1. 融資条件の改善

 

金利の引き下げ

銀行にとって企業の信用力が上がれば、貸倒リスクが下がると判断されるため、「リスクプレミアム(上乗せ金利)」が削減されます。特に、自己資本比率や債務償還年数の改善が顕著であれば、0.3〜0.5%程度の金利引き下げが実現するケースもあります。

 

借入限度額の拡大

財務指標が良好であるほど、融資枠(コミットメントライン)の設定がしやすくなります。これにより、「必要なときに必要な資金を確保できる」経営体制が整います。

 

返済期間の長期化

債務償還年数やICRの改善により、「長期間にわたって安定返済が見込める」と判断されれば、融資の返済期間も延長されやすくなります。これは月々の返済負担を軽くし、キャッシュフローを安定化させるメリットがあります。

 

 

2. 継続的な信用評価の向上

 

銀行は融資後も「モニタリング」と呼ばれる定期的な企業評価を行っています。このとき、決算書の数値が改善されていれば、次回以降の融資審査や追加融資の判断に良い影響を与えます。

 

とくに、

  • 営業利益率の安定 → 毎期黒字で「本業が強い」印象に
  • ICRの上昇 → 「金利支払いの不安がない」ことの証明
  • 自己資本比率の上昇 → 「健全経営の意識が高い企業」という評価

 

このように見られ、銀行側での「内部格付け」が1ランク上がることもあります。これは、将来的な融資交渉において大きな武器になります。

 

 

3. 金融機関の選択肢が広がる

 

財務指標の改善は、他行からの信用獲得にも直結します。複数の金融機関から良好な評価を得ることで、「競争原理」が働きやすくなり、有利な条件での融資を引き出せる可能性が高まります。

特に次のようなケースで有効です:

  • 新規事業の立ち上げ時にメインバンク以外の金融機関と交渉する
  • 公的融資や制度融資の申請時に信用情報が必要となる
  • 地方銀行や信用金庫からの「プロパー融資(保証協会なし)」を目指す

 

 

 

🔧財務指標を改善するための実践的アプローチ

 

以下は、実際の企業が取り組みやすい改善策です。

 

改善目標

具体策

自己資本比率を上げたい

増資、利益剰余金の積み上げ、不採算事業の整理

流動比率を改善したい

在庫の圧縮、売掛金回収の強化、短期借入の長期化

営業利益率を高めたい

売上総利益率の改善、販売費の見直し、原価管理強化

債務償還年数を短縮したい

キャッシュフロー改善、設備投資の抑制

ICRを上げたい

利息負担の削減(借換・返済)、利益の安定化

 

重要なのは、「単年度で一気に改善を狙う」のではなく、中期的に持続可能な改善計画を立てて実行することです。銀行はその姿勢を重視します。

 

 

📌銀行との対話姿勢も評価対象

 

財務指標の数値そのものに加えて、「改善に向けた取り組みをきちんと説明できるかどうか」も評価ポイントです。

例えば、

  • 決算報告時に改善の取り組みを説明する
  • 資金繰り計画や経営改善計画書を提出する
  • 担当者との定期的な面談を実施する

 

このような対話の積み重ねが、「この企業は数字を理解して行動できる」と銀行に印象づける材料になります。

 

 

4. まとめと融資を有利に進めるためのポイント

 

銀行融資の審査において、財務指標は単なる「数字」ではなく、企業の経営力そのものを映し出す鏡です。とくに中小企業においては、事業の安定性・成長性をアピールするうえで、客観的かつ説得力のある材料となります。

 

これまでに紹介した以下の5つの指標は、審査の中心的評価項目となります:

  • 自己資本比率:財務の健全性(倒産耐性)
  • 流動比率:短期資金繰りの安定性
  • 営業利益率:本業の収益力
  • 債務償還年数:借入金返済能力
  • インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR):利払い余力の有無

 

これらの数値を改善することで、金利の優遇や融資条件の緩和、銀行内での評価向上につながる可能性があります。

さらに、複数の金融機関と良好な関係を築くうえでも、財務指標の整備は大きな武器となるでしょう。

 

 

今すぐ取り組むべきこと

 

  1. 決算書の分析から始める

 まずは自社の決算書を見直し、主要な財務指標の現状を把握しましょう。過去期分を比較することで、傾向や改善点が明確になります。

  1. 課題に応じた改善計画を立てる

 指標ごとに改善すべきポイントを整理し、無理のない中期的な改善施策を検討しましょう。

  1. 銀行との「定期的な対話」を心がける

 改善の取り組み状況を、担当者に定期的に報告することも重要です。数字だけでなく、行動による信用の積み重ねが信頼関係を築きます。

  1. 必要に応じて専門家に相談する

 経営や財務に関する専門的な知見が必要な場合は、第三者(財務コンサルタント・税理士・中小企業診断士等)に相談することで、より実効性の高い対策が可能になります。

 

 

📣融資成功への第一歩は「財務の見える化」から

 

財務指標を正しく理解し、改善に取り組む姿勢を持つことは、銀行との信頼関係を深める最短ルートです。

銀行融資を有利に進めたい、資金調達をスムーズにしたいとお考えの方は、まず自社の財務体質を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

💡お困りの際は、専門家にご相談を

財務クリニック株式会社では、銀行融資の戦略的サポートや財務体質改善のご相談を承っております。

 

中小企業の立場に立った実務的なアドバイスで、資金繰りの不安を安心に変えるお手伝いをいたします。

 

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