NO247【資金調達の選択肢:銀行融資・リース・ファクタリングの違い】

2025/06/08 10:00:00 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO3
資金繰り改善 NO247

資金調達の選択肢:銀行融資・リース・ファクタリングの違い

  

はじめに

 

企業活動を円滑に進め、成長を実現するためには、適切な資金調達手段の選定が欠かせません。資金が潤沢であれば、設備投資や人材採用、新規事業展開などを加速できます。一方で、資金繰りが悪化すれば、日々の経営にも支障をきたす可能性があります。

 

中でも、「銀行融資」「リース」「ファクタリング」は中小企業が比較的利用しやすく、目的や状況に応じて使い分けることで経営の柔軟性を高めることができます。

本記事では、これらの違いを体系的に解説し、経営の意思決定に活かせる実践的知識を提供します。

 


 

銀行融資:安定的で基本的な資金調達手段

 

1. 銀行融資の概要

銀行融資とは、企業が金融機関から一定金額を借り入れ、契約に基づき元本と利息を返済していく資金調達方法です。融資には次の2つのタイプがあります。

  • 運転資金融資:仕入代金、人件費、テナント料などの日常的な支出を補うための短期資金
  • 設備資金融資:機械購入、店舗改装、不動産取得など、資産形成に関する長期資金

 

加えて、制度融資(信用保証協会付き)、プロパー融資、ビジネスローンなど、企業の規模・信用状況に応じて多様な形態が用意されています。

 


 

2. 銀行融資の審査項目と流れ

銀行は融資審査にあたって以下の要素を総合的に判断します。

 

審査項目

内容

財務内容

直近23期の決算書、損益・貸借・キャッシュフローの健全性

資金使途

明確かつ合理的な目的(資金繰り、設備投資、借換など)

返済能力

返済原資(営業利益+減価償却費)と返済予定額とのバランス

担保・保証

担保物件の有無、代表者の連帯保証の有無

事業計画

数値根拠のある収支計画書・資金繰り表の提出が望ましい

銀行との取引歴

既存融資の実績や信用格付け(リレーション)も考慮される

 

中でも、「どのように返済するのか?」という返済計画の妥当性が重視されます。

 


 

3. 融資形態と返済方式の違い

 

融資タイプ

特徴

返済方法

適した用途

証書貸付

一括で融資し、返済は毎月

元利均等/元金均等

長期投資、設備投資

手形貸付

短期間、手形で借りる

期日一括返済

運転資金、一時的資金

当座貸越

限度額内で繰返し利用可

任意(変動)

資金繰り対策、予備資金

ビジネスローン

保証人・担保なしも可能

短〜中期返済

急な資金ニーズ、小規模投資

 


 

4. 銀行融資のメリット(再強化版)

  • 低金利で借りられる
     公的融資制度や保証協会付き融資を活用すれば、年利12%前後の超低金利で借り入れることも可能です。
  • 多額・長期の資金調達が可能
     1,000万円を超える資金や10年を超える長期資金にも対応できるため、大型設備投資や工場新設にも適しています。
  • 企業信用の証明になる
     金融機関からの融資実績は、企業の社会的信用度を示すひとつのバロメーターとなり、仕入先や新規取引先との信頼関係にもプラスに働きます。

 


 

5. 銀行融資のデメリットとリスク

  • ⚠️ 審査期間が長く、緊急対応には不向き
     新規取引の場合、ヒアリング・書類提出・稟議などで1ヶ月以上かかることもあり、急な資金ショートには対応しづらいのが実情です。
  • ⚠️ 審査通過のハードルが高い
     特に創業期や赤字続きの企業は、自己資本比率や債務超過などが問題視され、融資が下りないこともあります。
  • ⚠️ 返済義務が固定されている
     売上が落ち込んでも返済は毎月行う必要があり、返済原資の確保が資金繰りの重荷になる可能性があります。

 


 

6. ケーススタディ:銀行融資の実務活用

ケース:製造業の設備投資(3,000万円の長期融資)

金属加工業者が新たなNC旋盤を導入するため、7年返済の設備資金を調達。返済は元金均等方式とし、キャッシュフローを安定化。

ケース:建設業の資金繰り(当座貸越枠1,000万円)

工期の遅れで一時的な現金不足が発生。当座貸越枠を利用し、資金繰りショートを未然に回避。

 


 

7. まとめ:銀行融資が適しているケース

銀行融資は以下のような場面で有効です。

  • 設備投資や事業拡大のために中長期の安定資金を必要とする
  • 公的融資制度(日本政策金融公庫、制度融資など)を活用したい
  • 財務体質が安定し、金利を抑えて返済可能な見通しがある
  • 信用力向上を図り、将来的な資金調達余地を広げたい

 


 

このように、銀行融資はコストを抑えながら計画的に資金を調達できる優れた手段ですが、その一方で時間と審査基準の厳格さから、あらかじめ準備と戦略が求められます。

 

次に、銀行融資と対比される「リースとファクタリング」について、それぞれの特徴と使い分けのポイントを詳しく解説していきます。

 

リースとファクタリングの活用術

 

リースとは:資産を「買わずに使う」資金調達法

リースとは、企業が必要とする設備や車両などを購入せず、リース会社から借りて使用する契約形態です。リース料(賃借料)を月々支払うことで、初期費用を抑えつつ必要な資産を導入できます。

 

【主なリースの種類】

種類

概要

所有権

契約終了後の扱い

ファイナンスリース

原則として中途解約不可。リース期間中は使用のみ可能

リース会社

再リース・返却・買い取りなど

オペレーティングリース

比較的短期間。会計上オフバランス処理が可能な場合あり

リース会社

返却が基本(更新も可)

 


 

リースのメリット

  • 初期投資を抑えられる
     現金購入と違い、設備導入にかかる数百万円〜数千万円を一括支出せずに済むため、資金繰りの安定に寄与します。
  • 審査が比較的通りやすい
     リースは物件が担保の代わりとなるため、銀行融資に比べて信用力が低めの企業でも利用しやすい傾向があります。
  • 固定資産税・保険料が不要
     所有権がリース会社にあるため、法定償却や各種税金は基本的に発生せず、管理コストも抑えられます

 


 

リースのデメリット

  • ⚠️ 総支払額が割高になる
     購入と比べると、金利相当分を含むため長期的にはコスト増になります。
  • ⚠️ 中途解約が困難
     契約期間中の解約は原則不可。事業撤退や縮小に伴い不要になっても支払い義務が残る点に注意が必要です。

 


 

リースが向いているケース

  • 設備やIT機器などをすぐに導入したいが、現金に余裕がない
  • 創業間もない企業自己資本が乏しい企業
  • 減価償却や資産管理の手間を避けたい場合

 


 

ファクタリングとは:売掛金を即時現金化する仕組み

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却することで、代金を早期に回収する資金調達手段です。

 

本来の入金期日を待たずに資金化できるため、キャッシュフロー改善や資金ショート回避に有効です。

 

【ファクタリングの主な形態】

 

種類

特徴

債務者通知

信用リスク負担

2者間ファクタリング

売掛先に通知しない(非通知型)

不要

売り手企業が負担

3者間ファクタリング

売掛先に通知し、同意を得る

必要

ファクタリング会社が負担(ケースにより異なる)

 


 

ファクタリングのメリット

  • 即日〜数日で資金化が可能
     売掛金の回収を数ヶ月待たず、即時の資金繰り改善が図れます。
  • 負債にならない(オフバランス処理)
     貸借対照表上、負債として計上されないため、財務諸表の見栄えを悪化させずに資金を得ることができます。
  • 担保・保証が不要
     審査の中心は売掛先の信用力のため、自社の業績が芳しくなくても利用できる場合があります。

 


 

ファクタリングのデメリット

  • ⚠️ 手数料が高め
     一般的に2%15%程度と、銀行融資に比べて調達コストが高い傾向があります。
  • ⚠️ 売掛先との関係性に影響する可能性
     3者間契約では売掛先に通知されるため、相手先の信用不安を招く懸念があります。
  • ⚠️ 反復利用は財務体質を弱めるリスク
     恒常的な利用は、本来の回収力を低下させ、依存体質に陥る恐れがあります。

 


 

ファクタリングが向いているケース

  • 売掛金の回収までの期間が長く、資金繰りが不安定
  • 銀行融資の審査に通らなかったが、売掛先は優良企業
  • 急な支払いに備え、短期資金を素早く確保したい

 


 

銀行融資 vs リース vs ファクタリング:比較表

 

項目

銀行融資

リース

ファクタリング

主な目的

長期資金(運転・設備)

設備導入

売掛金の現金化

調達スピード

遅い(1週間〜数週間)

比較的速い

非常に速い(即日〜)

審査の厳しさ

高い

やや低い

比較的低い(売掛先重視)

担保・保証

不要

不要(物件が担保)

不要

コスト(利息・手数料)

低い

中程度

高い

財務処理

負債計上

オフバランス可能

原則オフバランス

 

目的別に選ぶ最適な資金調達手段

企業経営においては、単に「資金を調達する」だけでなく、その資金がいつ、どこで、どのように必要なのかを明確にすることが重要です。調達手段を誤ると、資金繰りが悪化したり、経営の自由度を失うことにつながりかねません。

以下では、資金ニーズを「目的別」に分類し、それぞれに適した手段とその活用のコツをご紹介します。

 



 1.  【短期的な資金繰りの改善】

 

よくある課題

  • 売掛金の回収が遅れて現金が不足
  • 急な支払いが発生し、当座預金が逼迫
  • 賞与・税金など季節要因で支出が集中

おすすめ手段:ファクタリング/当座貸越枠の設定

ファクタリングは、入金待ちの売掛債権を現金化できるため、即効性の高い資金調達方法として非常に有効です。特に信用力の高い売掛先がある企業にとっては、銀行融資が通らない状況でも利用できるチャンスがあります。

当座貸越枠を銀行と事前に設定しておくのも有効で、予備資金として備えることができます(いわば経営のセーフティネット)。

 


 

2. 【設備投資・事業拡大】

よくある課題

  • 工場や店舗の新設
  • 高額な機械設備やITシステムの導入
  • 人員増強に伴う事務所拡張

おすすめ手段:銀行融資(設備資金)/リース

大規模かつ長期的な支出には、低金利・長期返済が可能な銀行融資が基本です。借入期間を減価償却期間に合わせることで、キャッシュフローとの整合も取りやすくなります。

一方、資産として保有する必要がない設備(コピー機・パソコン・車両など)であれば、リース契約で導入することで初期投資を抑えることができます。

 


 

3. 【創業直後・信用力が低い段階での資金確保】

よくある課題

  • 創業初年度で金融機関の信用がない
  • 設備や什器の購入資金が不足
  • 補助金や助成金の入金前に一時的な資金が必要

おすすめ手段:リース/制度融資/ファクタリング

創業フェーズでは、まず「設備は保有せず、借りて使う」という考え方が有効です。リースで資金の流出を平準化することが、キャッシュフローを守る鍵となります。

また、自治体や商工会議所を通じて利用できる**制度融資(創業支援型)**は、比較的金利が低く、保証協会のサポートも受けられます。

売上が出始めたタイミングであれば、売掛金を活用したファクタリングにより、資金回収を前倒しできます。

 


 

4. 【財務の見栄えを意識したいとき】

よくある課題

  • 新規取引先や投資家に向けて財務を良く見せたい
  • バランスシートのスリム化を図りたい
  • 借入比率を低く抑えたい

おすすめ手段:リース(オフバランス)/ファクタリング

会計処理の観点から、オフバランス型のリースやファクタリングは、財務諸表上の負債増加を避けつつ資金調達できる手段です。

特にオペレーティングリースを使えば、固定資産や借入金を増やさずに事業運営が可能になります。見た目の自己資本比率の改善にも有効です。

 


 

ケーススタディまとめ:最適な選択は「目的×時間軸」

 

目的/時間軸

短期(数日〜数ヶ月)

中期(半年〜3年)

長期(3年以上)

資金繰り改善

ファクタリング/当座貸越

銀行短期融資

銀行長期融資

設備導入

リース

銀行融資(分割)

銀行融資(長期)

財務改善

ファクタリング

リース

リース(長期契約)

創業期

リース/ファクタリング

制度融資

信用力構築後の融資

 


 

おわりに:資金調達の選択が、企業の未来を左右する


資金調達は、単に「お金を借りる」行為ではなく、企業の経営戦略そのものです。どの手段を、どのタイミングで、どの目的で選ぶかによって、資金繰りの安定性、成長スピード、信用力の向上など、すべてに影響します。

財務クリニック株式会社では、企業の資金ニーズに応じて最適な調達手段をご提案しています。


「どの資金調達方法が自社に合っているのか?」
「事業計画に合わせて、資金をどう組み立てるべきか?」

といったご相談は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。